100坪50万円
先日の展覧会搬入日のことです。
電車を乗り換えて腰を下ろすと、何やら怪しげなオッサンが一直線に歩み寄ってきた。
年は70才くらいでしょうか。
丸坊主に無精髭、ちょっとだらしない恰好にサンダル履き。
「うわっ、やばっ」と思った時はもう隣に座ってた。
「ちょっと、よろしいでっか」
うつろな目でいかにもやばそうな雰囲気。
「どうしました?」と静かに対応。
すると、
「土地買うてくれまへんか?」と言ってきた。
「いやいや、さすがに土地はよう買いませんわ」
と、やんわり断る。
「100坪50万でいいから!!!」
昔、200万円で買ったが、今お金がないので50万円でたたき売りだと言う。
周りには商業施設もあるし、喫茶店やらレストランもあると言うが、いきなり歩み寄ってきたどこの誰かも分からんオッサンから土地は買わんでしょ。
「いま、コロナで仕事ないから無理です」ともっともらしく断る。
すると、こんどは・・・、
「誰か買う人を紹介してくれたら、紹介料として5万円払います」ときた。
よっぽどお金に困っているのか、なんなのか鬱陶しくなってくる。
そこで、
搬入予定の油絵を指して、
「これ油絵ですけど、30万円で買うてくれたら考えますわ」と振ってみると、一瞬じろっと睨みつけられる。
ちょっとビビる・・・。
しばらくの沈黙の後、
「分かった、もうええわ」と立ち去っていくオッサン。
そのタイミングで目的の駅に到着。
何が起こるか分からんものだ。